宇宙手帳

広く日常。

エニグママニア(3) 子供の頃のありえない場所

小学生の頃、友達が、「とてもきれいな小川が流れている素敵な場所を見つけたから、一緒に行こう」と誘ってくれました。

その子はおとなしくて、ちょっと陰のある感じの子で、他の子に軽くいじめられていました。
わたしはなぜかその子と結構仲よくしていて、おうちに遊びに行ったことも1~2回ありました。


で、その子が「きれいな小川の流れる秘密の場所」に連れて行ってくれるというので、ある日の学校帰りに、その子について行きました。

寡黙なその子が、そこはとにかくきれいな場所なんだと、道中何度か言っていました。


だいぶ歩きましたが、いつまで経ってもその小川の流れるきれいな場所に到着しません。
「おかしいなあ、こんなに遠くなかったような気がするんだけど」と言うその子について歩きながら、わたしは正直、少しずつ興味を失っていました。

結局、車通りの多い道から、その小川に至るはずの脇道を見つけることができず、秘密の場所に行くことはあきらめることになりました。
友達はわたしにあやまっていたような気がしますが、わたしはちょっと歩き疲れて、小川やきれいな場所などどうでもよくなっていたので、全然気にしませんでした。


ところが大人になって、エニグマ系まとめなど読むようになって、「子供の頃に、どういう機序でか、お花畑のような美しい場所に行ったが、その後二度と行くことができなかった」という話が結構あることに驚きました。

あの時、友達がわたしを連れていこうとしたのは、そういう、一度限りの不思議な場所だったんじゃないか……と考えるようになりました。
おとなしくて友達も少ないあの子のために、一度だけ出現した、美しい場所だったのかもしれないと。