宇宙手帳

広く日常。

戸惑う純正厨

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入り口の引き手

市内にある老舗の万年筆店に足を踏み入れてみました。

小さいお店ですが、筆記具や消耗品類が整然と並べられていて、きれいなお店です。
この道推定70年くらいと思われる、大ベテランの店主のおじいさんとおばあさんがいらっしゃいました。


さて。

今日来たのは、「アウロラのブルーブラックインクがほしかったから」というピンポイントな動機がありました。
田舎の文具店には、なかなか置いてないアウロラのインク。
でもこのお店にならあるかも?と期待して来たのです。


それで、店主のおじいさんに「アウロラのブルーブラックはありますか」と訊いてみました。

すると、
「ないなあ」
と言われてしまいました。


インクが並べてある棚を見ると、パイロット色彩雫シリーズはかなり並んでいたし、あと他の国産メーカー品や、舶来ではペリカンやパーカーあたりが少し見えました。
でもアウロラはないらしい。

ないか……。じゃあしょうがないな。アマゾンで買うか。


おじいさんが言うには、
「今はもうアウロラのインクはどこにも売ってない。売れないから置いてない。どうしても欲しければ、東京の代理店に行くしかないだろう」
とのこと。

ええ!?
そんなにレアなのか!!


で、おじいさんからのアドバイスは、
「今はどこのインクもよくできてるから、他社のペンに入れても問題は起こらない。
パイロットなんかすごく研究し尽くしてるから、パイロットのインクを入れておけば大丈夫」
と。


わたしは、所謂「インク沼」には全然縁がなく、ブルーブラックとブルー以外の色にほとんど関心がありません。
更に最近は、ブルーのインクが書いてまもなく薄くなってしまうのが気になって(薄い色のインクがあまり好きでない)、ブルーブラック一本やりみたいになってきています。


インクの色に関心がない代わりに、純正厨というのか、万年筆本体のメーカーと同じメーカーのインクを入れたいという気持ちが強いようです。
以前は他社インクも結構入れてたのですが、少しいい万年筆を使うようになると、ちょっと神経質になってきたのか、純正を好むようになってきました。


少し前に出たムック『趣味の文具箱』Vol.46 万年筆使いの流儀特集でも、「原則的に同一メーカーのインクを使うこと!」と専門家が言っています。
ネット上にある万年筆の使い方指南サイトなどを見ても、たいていそれが書いてあります。


「他社インクを入れて大問題が起こった事例がある」(軸の内部が溶けたとかなんとか)
「他社インクを入れると、中でインクが詰まってくる」
「他社インクを入れると保証の対象外となる」

などといったものものしい話も、本やネットでささやかれています。


しかしその反面、先述の「専門家」と同業者である別の人が平気で他社インクを楽しんでいる様子も、同じ本に載っているという謎……。

結局は、個人の考え方の問題であって、最終的にはお馴染みの「自己責任」の4文字で決着させられる話なのでしょう。


老舗の老紳士が大丈夫と言っておられるのだから、たぶん大丈夫なんだろう。
他のメーカーのは知らないけど、パイロットなら間違いないみたいな口ぶりだったから、恐る恐るパイロットの深海を入れてみようか。


それにしても、アウロラのインクってそんなに入手困難なのかな……。

アマゾンにはあっt……いや……アマゾンばかりで買う人が多いからこういう小さなお店が経営が厳しくなるのだ。
……そう思ったからこそ、アマゾンで買わずにお店まで来たんだけどなあ。


純正厨はこれからどうすればいいんだろうなー。

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インクついてたけどこれ黒なんだよなー

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AURORA 88 Saturno