宇宙手帳

広く日常。

【読書感想文】青空文庫の至宝【ネタバレなし】

今年は殺しモノの小説をたくさん読もう!と決めているのですが、現在四旬節中(今年は4月15日まで)のため、好きなものを何か節制しようと思い、四旬節に相応しくない殺し小説の読書を自粛することに決めました。

しかし四旬節が結構長くて、殺し以外でいいから何か小説が読みたくなったので、青空文庫を読むことにしました。


青空文庫でわたしが一番よく読むのは、ダントツで江戸川乱歩なのですが、乱歩先生も殺しモノが多いので、他の作家にしようと思いました。
それで、無難に芥川龍之介など読んでみたのですが、どうも気分が乗らない。
こんなのじゃないんだよ、わたしが求めているのは。

じゃあどんなの?


……というわけで、「これだ!」となったのが、小川未明だったのでした。


小川未明は、『赤い蝋燭と人魚』という話がたぶん一番有名。童話作家として知られています。

まだ全部読んだわけではないし、青空文庫でも小川未明はまだ半分くらいしか入力が完成していないようです。
そこで、図書館でも作品集を借りてくるなどして、日々少しずつ読んでいるところです。

小川未明の作品は、ほとんどが短編で、長さだけでいえば星新一ショートショート程度しかありません。


内容は、童話も多いのですが、詩もあるし、大人向けの怪談もあります。

童話は、「悪い奴がガツーンと痛い目に遭う」的な痛快さはありません。善い人が報われることもあまりありません。かたき討ちもありません。

むしろ、村人を悩ます凶悪な乞食が、なぜか燕になって南の国の王様になったり、意地悪な教師が更に増長したまま話が終わるなど、結構理不尽。
なので、勧善懲悪の痛快話を期待すると拍子抜けしますが、世の中そう簡単に悪い者にバチが当たることなんかないんですよねー。
正直、もんやりとしてハッキリしない話も多いです。クズばっかり出てくる話も結構あります。


詩も、全集では「童謡・少年詩」の巻に収められているのに、どう見ても大人向けな真っ黒な作品もあって、非常に心躍る思いで読んでいます。
そういうのばっかりではないですが、そういうのが好きなので……。


現時点でのお気に入りとおすすめを、少しご紹介しておきます。
全作品を読んだ後に、また続報を書くかもしれないし、書かないかもしれません。

童話

『赤い蝋燭と人魚』、『野ばら』、『海の彼方』、『月夜と眼鏡』、『殿さまの茶わん』、『ものぐさじじいの来世』
赤い蝋燭と人魚は半分怪談かもしれない。
他のは安心して読める、いい話。かわいいおじいちゃんもよく出てきます。

『闇』
怖いです。

怪談(不可解・エニグマ寄り)

『老婆』、『抜髪』
オチも何もない、ただの変な話。しかし怪談はこういう不条理なのが一番面白い。不条理すぎて、怪談だけど変な笑いがこみ上げてくる。


その他、「オカルト」部門でも作ってそこに入れられるような作品もありますが、自分はオカルト系あまり好きじゃないので、ここでおすすめするのはやめておきます。
亡霊とか死神とかが出てくる話が好きな方は、探してみてください。


結局、あまり四旬節向けの作家ではなかったかもしれない、と今更思う。