宇宙手帳

広く日常。

読書感想文【ボタニカル・ライフー植物生活ー】

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3月から勤務地が変わって、通勤時間が片道1時間半になったので、この時間を有効活用すべく通勤読書を始めました。
その第一弾がこれ。


いとうせいこう 『ボタニカル・ライフー植物生活ー』。
都会のマンションで植物を育てることを楽しみとする「ベランダー」の著者が、植物との生活を綴るエッセイです。


植物を「育成してる」「栽培してる」というよりは、仲間とルームシェアでもしているような感覚。
かといって流行りの擬人化というほど相手を人間臭くも見てなくて、相手はやっぱりあくまでも植物。
植物の生きざまを、ともに生活しながら見つめる作者に共感の連続でした。
「人間、またまた植物に完敗」的な、どこかすがすがしい敗北感を伴う読後感はとてもあたたかい。


育てている植物に花が咲いた時の気持ちを書かれた一話があって、それには特に激しく共感した。
花を咲かせた植物を、いちばん人目に触れそうなところに出しておく人の心理。それは、「この私が丹精込めて育てたおかげで、こんな立派な花が咲いたんですよ。きれいでしょう?」という自慢ではないのだと。
「たまに水とか遣ってなんか適当にやってたら、こいつこんな花を咲かせちゃったんです。すごいでしょう!?自分ひとりで見とくのもったいないから、皆さん見てやってください。この奇跡を目撃してやってください」(←原文ママではありません)というような心理なのだ、という話。
すごくよくわかる……!


わたしはチランジアしか育ててないけど、花が咲くと狂喜ものですよ。あいつらは特に、たまーーにしか花をつけない種類の植物なので。花をつけると、うれしくて写真撮ってInstagramに上げますね当然ね。とにかく見てくれ!!!というその気持ち。わかる。
チランジアの場合は、花が咲いた後に子株が出るので、花が終わってもさらにお楽しみがあるんですけど、自宅の植物の話はまた別の機会に書きます。


本の話に戻ります。
植物の脇役的に、本書にはメダカ、金魚、虫などの小さな動物も登場します。ああヤゴロク。
ヤゴロクの餌に何を与えればいいか困り果てた末に、ハッと思い至ったアレ……には爆笑しました。
この脇役たちがまた、憎らしかったりかわいかったりして、植物とそれを取り巻くベランダの小さな世界がとてもうらやましくなってきます。
土を使わないチランジアを育てているわたしも、この本を読んだら狭いベランダで土ものを育てたくてうずうずしてきました。引越す前の家の方がベランダの面積が倍くらいあったんだがな……。


桜の花が咲こうとしている今の時期、青空の下でこの本を読了できてよかった。花の季節ですね。