宇宙手帳

広く日常。

読書の秋、どう読む?

この前、ネットのどこかで、素敵な言葉を拾いました。
うろ覚えなのですが、

「何かをやり遂げた時の達成感より、何かに熱くなっている時の充実感」

というような内容だったと思います。
発言者は、これも曖昧な記憶ですが、確か高田純次さんでした。


この言葉は真理でしょう。

昨今の風潮として、「達成感」を得ることに躍起になりすぎていないか?と思います。
確かに、達成感も大事だけど、充実感の方が幸せに近い気がするのです。

達成感と読書術

ふと思い出したのが、少し前に再読した『能率手帳の流儀』。

ここで書かれていた読書術として、
「長編小説に挑戦する時は、初めから全巻買い揃えないで、1巻から1冊ずつ買っていくこと。1巻が読了できれば、よし、次の1冊を読もう、という気持ちになれる。小さな達成感を積み重ねていけるのがいい」
という話がありました。


確かにそれは一理あります。
いきなり全巻買い揃えてしまうと、途中で挫折した時に、残った分がもったいない。
読めなかった巻たちに、いつまでも責められているような気持ちさえします。


実際わたしも、中国の有名な小説『紅楼夢』など、長編小説を最後まで攻略できなかった経験が多々あります。
だから、野口式の「1冊ずつ買って読む」読書術に、基本的には賛成です。


が。

今回に限っては、自分が読もうと思っている長編小説へのわたしの思いは、野口さんの長編読書術とは、まったく違っているのです。むしろ、逆。


先日、ある長編小説の18巻セットを注文しました。もうすぐ届くと思います。
読む前から大興奮です。
「18冊も読める!どうしよう!幸せすぎる」「これは相当長い時間楽しめそう」と思うと、うれしくてたまりません。

早く読みたくてしかたがないし、1冊ずつ手に入れてチョボチョボ読むなんて我慢できそうにない。早く18冊の本に取り囲まれたい気持ちでいっぱいです。
途中で挫折する気など、全然起きません。


もともと読書が苦手で、挫折経験も多々あるわたしなのに、どうして今回ははこんなに読む気マンマンなのか。
それがたぶん、冒頭に紹介した言葉と関係しているのです。


長編小説に「挑戦」して、「攻略」したり「達成」したりする目的で読むのではないからです。

今から読もうとしているその作品は、別のメディアでも少しかじったことがあるおかげで、今、興味関心MAXになっているので、読まないうちから好きになれることが確定なのです。
達成感とかどうでもよくて、その作品をもっと好きになるために読むのです。

達成もいいけれど

小さな達成感を積み重ねて、自信をつけていきながら、大きな目標を達成する。
それは確かにすばらしいことです。

でも、自分が今まで経験してきた「小さな達成感」の数々を振り返ると、自尊心が一時的に満たされて、確かにうれしかったけど、「幸せ」っていうのとはちょっと違うかなあ……という感じがします。
得意になるのと幸せな気持ちになるのは、似てるけど違うと今は思います。


外側からの視点に切り替えてみると、個人的に、得意になってる人を見るよりも、何かに夢中になっている人を見る方が楽しいです。

ということは、自分が得意になるよりも、何かに夢中になっている方が、周りの人を幸せな気持ちに近づけられるのでは?



……などなどといろいろ考えさせられた、高田純次氏の言葉。
読書の秋、何かを達成しなければという謎の義務感から離れて、好きな作品を夢中になって熱く読みたいと思っています。