トキさんとの出会い
突然ですが、中屋万年筆を購入しました。
「美しい字を書けるようになったら中屋さんの万年筆を買いたい」と言い出してからまだ1ヶ月も経っていないのに、一体どういうことなのか。
言い訳を以下に述べますね……。
オーダーイベント開催
わたしは瀬戸内地方の某都市に住んでいますが、月に1回は篆刻教室のため、大阪に行きます。
ところが、今月の大阪行きの日を含む3日間、中屋万年筆のオーダーイベントが神戸の文具店で開催されるという情報を、1週間前に偶然知ってしまったのでした。
中屋万年筆はネットでも注文できます。
でも、「せっかくの大きな買い物なんだから、もし可能であれば、中屋さんの販売イベントで購入したい」と考えていました。
地方在住者にとって、そんな機会はまずないんですが……。
まあ書道の腕を磨きつつ、ゆっくり機会を窺おう、と思っていたのです。
それが突然「来週やります」との告知。
しかもたまたま大阪行きの日に開催とか。
行く!?
いやいや、さすがに時期尚早だろう……と何度も逡巡したのですが、「こんな機会は二度とないかもしれない!」という気持ちの方がどうにも強く、「お金のこととか字が上手くなったらとか、そんなことは後でどうとでもすればいいじゃないか!」という謎の声まで聞こえてくる始末です。
気がついたら買う気マンマン状態になっていたのでした。
軸を選ぶ
高級万年筆を職人さんと相談しながら、目の前で作っていただく……という経験は、もちろん初めて。とても緊張しました。
事前に中屋さんの公式サイトで、どれがいいかなーと楽しく物色してはいました。
濃い赤が好きなので、漠然と「ポータブル赤溜かなー」と思いつつ、鴇溜(ときため=朱鷺色)もいいなあと思ってました。
が、目の前に実物をズラリと並べられると、どれも素敵で目移りしてしまう。落ち着け。
ここは基本に立ち返るべきだなと思って、赤がいいですと伝えました。
ところが、先生が持ってこられた中にも店舗の在庫にも、ポータブルサイズの赤溜はなく(売り切れ)。
わたしも「何が何でも赤!」とまでは思っていなかったので、「じゃあ鴇にします」とアッサリ鴇に決定。
基本は赤が好きだけど、最近はオレンジ系のものもちょっと好きだし、鳥部員だし、北斗のトキも好きだし(関係ない)。
鴇いいんじゃないでしょうか。
ポータブルの鴇溜軸は2本あったので、好きな方を選ばせていただくことができました。
ニブを選ぶ
ニブは、(自分的には無難なところで)細字にしました。
細軟も試したけど、筆圧低いせいか、違いがよくわからない。
「机に置いた紙面に書くならどちらでもいいが、不安定なところで書く場合、細軟だとやや暴れる」と言われ、自分はよく線がフラフラするから、じゃあ硬い方で、となりました。まあ硬い方で机上で書いてもフラフラするけど。
細軟はブルゴーニュがあるしな。
ご縁と実力
「縁」というものについて、今回しみじみ考えてしまいました。
タイミング良すぎるイベント開催もご縁だったし、赤が売り切れてて鴇にしたのもご縁だったような気がします。
しかし、「美しい字を書けるようになったら美しい万年筆を買う」と言っていたのに、美しい万年筆が先に来てしまって、実力が伴ってなさすぎてヤバイ現状。
こうなったら、素晴らしい書き味に調整されたトキさんで字の練習をたくさんして、経年変化して育っていくという漆塗りとともに自分も育つしかない……と思っています。