宇宙手帳

広く日常。

旅とカメラ

旅カメラ。旅行に持って行くカメラについてです。
(この記事はカメラの専門的な話題にも触れていますので、難しいことはわからないよ!という方、ごめんなさい)


旅行を予定している人へどんなカメラを持って行くかについてのアドバイスは、一般的には、

旅行の場合、カメラは単焦点レンズよりズームレンズの方が便利です。
近くに寄りたくても寄れないケースも多々あるし、逆に建物の全景を入れて撮りたいケースも多いと思われます。
広角から望遠までをカバーするズームレンズが役に立つでしょう。

といわれます。
まったくその通りで、反論はありません。
反論ではないけど、わたしはズームレンズを持たずに、単焦点レンズのみで旅行に行くのが好きです。



三国志で有名な長坂坡に行った時、大通りの真ん中、高い台座の上に大きな趙雲の像がありました。
広い道を隔てたところからしか写真を撮ることができません。
ミラーレス一眼に焦点距離35mm相当のパンケーキレンズしか持っていなかったわたしは、趙雲の顔アップは撮れませんでした(ズーム持ってた友達に撮ってもらいました)。


それで、やっぱり旅行にはズームレンズ必須だな!と思い、標準ズームレンズを中古で買いました。

そしてまた中国に行きました。今度は西安
寄れない被写体を大きく写せる、ズームレンズを活用して兵馬俑など撮りました。



長年写真に興味を持っているので、広角と望遠の特徴や使い分け方は把握しています。状況に応じて、焦点距離を選んで撮っています。

にもかかわらず、ズームレンズで撮った写真…特に望遠で撮った写真は、後で見るとなんとなく違和感があるのです。本当に「なんとなく」程度なんですが…。
自分で撮った写真なのに、自分の視点ではないような、ごくわずかにウソっぽい感じ。



そういう経験を何度かして(失敗もして)、最近、自分が自分の写真に求めるものがやっとわかってきました。

わたしは、目で見たままの状態にできるだけ近い画像を写真にしたいようです。
イケメンの像が遠すぎて顔がよく見えなくても、近寄れなくてアップが撮れなかったというのがその時のわたしの目が「見たまま」の実情なので、遠い写真でいいのです。
後で写真を見返して、「ああそうだ、この時ここから趙雲の像見たなあ」と当時の記憶を鮮明によみがえらせてくれるのは、ズームでアップにした写真ではなく、大通りを隔てたところからパンケーキレンズで撮った、小さな趙雲像の写真なのです。


レンズの焦点距離(35mm判換算)は、35mm~45mmくらいが好きです。特に好きなのは38mm~40mmくらい。
そしてだいたい40mmくらいの画角が、人間が物を見る時の自然な視野にもっとも近いと言われています。


「目で見た状態に近い写真を残したい」という気持ちは、iPhoneで撮っていても同じです。
カメラアプリには多種多様なフィルタがついていて、レトロ調やトイカメ調に写真を簡単に変換してくれます。わたしは使いませんけど。
デジカメやiPhoneで撮影すると、ホワイトバランスや露出や色温度のせいで、見た目と違う色に写ってしまうことがよくあります。そういう時に、見たままの色に近づけるために補正をすることはありますが、フィルタは使いません。
レトロ調などのフィルタをかけて撮った写真は、撮ったその時はアートっぽくて面白くても、何年も経ってから見ると、フィルタを取り除いてリアルの色が見たくなると思います。大事な写真であればなおさら。



「人間の視覚を超えた表現を可能にするのが写真表現であり芸術である」
というのもひとつの真実ですが、芸術はさておき、個人の記録、或いは路上観察という一応の「芸術」としても、自分が大切にしたいのは「自分の視覚で見た状態にできるだけ近い画像」です。


というワケで。
これから旅行(に限らずですが)にはズームレンズは持って行かないことにしました。わたしには40mm程度の単焦点レンズが1つあれば充分満足なんだということがよくわかったので。

最初の方で引用した一般論とは全然違う結論になってしまいましたが、あくまでわたし個人の考えです。どちらも参考まで。



写真はシャッター押すだけなんだから誰が撮っても同じだ、と思われそうですが、実は撮りたいものも撮り方も、人によってビックリするくらい多様です。

旅先で、撮りたいものは何でも拡大して撮るスタイルの人もいるでしょう。
全部パノラマで撮りたい人もいるでしょう。
自分が旅先でどんなふうに撮りたいか、どんなふうに残したいか。それを少し考えてからカメラ選びをするといいと思います。